2019年度声明呼びかけの趣旨

声明呼びかけの趣旨

 

兵庫県は2018年度より県下の外国人学校へ支給している「外国人学校振興費補助」に新たな要件を追加することで、朝鮮学校補助金を大幅に削減するという差別的な措置をとりました。2018年11月、私たちはこれに抗議し、改善を求める声明文を、374名の研究者の賛同を得たうえで、兵庫県に提出しました。しかし県は2019年度もその方針を変更しませんでした。また、政府は幼児教育・保育無償化制度からも朝鮮学校付属幼稚園を除外しており、これについて県は地方公共団体として必要な措置を取っていません。そこで私たちは、兵庫県による今回の措置に改めて抗議するとともに、「外国人学校振興費補助」の減額を速やかに撤回すること、幼児・保育無償化制度から朝鮮幼稚園を含む各種学校を除外したことについて、国に改善を要求し、県として支援策を講じることを求めるべく、今年も研究者声明を発表し、賛同人を募り、県へ提出すべきであるとの結論に達しました。

 

 2018年、私たちは補助金減額措置が主に5つの理由から不当であると指摘しました。

しかし県は、「外国人学校振興費補助」に「教員の2/3以上が日本の教員免許を所有すること」という新たな交付基準を設け、朝鮮学校6校への補助金を従来の約2分の1に削減する方針を、2019年度も変更しませんでした。県はその「補填策」として二つの事業を実施することを通達しましたが、実際には質的にも量的にも、補填策としてほとんど意味を成さないものであると言わざるをえません。

 

また、近年政府による朝鮮学校に対する弾圧はますます加速しています。10月よりスタートした幼児教育・保育無償化制度からも、朝鮮学校附属幼稚園を除外することを決定しました。県はこの政府の方針を無批判に追認し、地方公共団体としての必要な措置を取っていません。これは阪神・淡路大震災という未曽有の危機に際しても外国人県民の存在を考慮した取り組みを数多く行ってきた、多文化共生を標榜する自治体としての義務を怠るものです。

 

また、朝鮮学校と生徒に対するヘイトスピーチヘイトクライムも後を絶ちません。私たちは、民族の言葉や文化、歴史を学び、在日朝鮮人としてポジティブなアイデンティティを形成するために朝鮮学校に通う生徒たちが、これ以上在日朝鮮人であることを理由に直接的な暴力、差別を受けてはいけないとの強い思いのもとで、兵庫県朝鮮学校生徒の民族教育権を保障することを求めます。

 

私たちは教育研究活動に携わりながら、日本全国、さらには海外に広がるネットワークを有する研究者のポジションを生かし、国内外の研究者から賛同を募ることで、県にさらなる働きかけを行うことにしました。ご理解、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 

 

★お問い合わせ先: hyogo.hojokin.seimei@gmail.com

2019年度声明呼びかけ人

2019年度声明呼びかけ人

※2019年10月4日時点のリストです。変更があり次第、ブログ上で更新します。

 

佐々木 祐(神戸大学大学院人文学研究科 准教授)
杉山 精一(神戸市外国語大学 准教授)
田中 敏彦(神戸市外国語大学 名誉教授)
中川 慎二(関西学院大学経済学部 教授)
前田 拓也(神戸学院大学現代社会学部 准教授)
朴 沙羅(神戸大学大学院国際文化研究科 講師)
李 洪章(神戸学院大学現代社会学部 准教授)
(50音順)

賛同の要領

 2019年度研究者声明をアップしました。

 声明文(https://hyogo-hojokin-seimei.hatenablog.com/entry/2019/10/03/225743)をお読み頂き、賛同いただける場合は、以下の賛同フォームに必要事項を入力し、送信してください。

 

https://forms.gle/uiLqTDXf4ixwS96Z8

 

〇「研究者」は、大学院生、ポスドク、非常勤講師、退職後の研究者、民間研究機関の研究者、在野研究者など、幅広く想定しています。また兵庫県下の研究者が呼びかけ人となっていますが、賛同は兵庫県に限らず、国内外から広く募りたいと考えています。

 

賛同名簿は下記の第1次集約後に兵庫県に提出しますが、その提出日程や方法については後日賛同者にお知らせいたします。

 

第1次集約締切:10月31日(木)

 

 

ご不明の点は、 hyogo.hojokin.seimei@gmail.com までご連絡下さい。

朝鮮学校生徒の学ぶ権利の保障を求める研究者声明

朝鮮学校生徒の学ぶ権利の保障を求める研究者声明

 

兵庫県知事 井戸敏三

 

 わたしたち研究者有志一同は兵庫県に対し、朝鮮学校生徒の学ぶ権利を保障するために、下記のことを強く求めます。

 

1 「外国人学校振興費補助」の減額を速やかに撤回すること

2 幼児教育・保育無償化制度から朝鮮幼稚園を含む各種学校を除外したことについて、国に改善を要請し、県として支援策を講じること

 

 

1 「外国人学校振興費補助」の減額について

 2018年11月、朝鮮学校に対する補助金が大幅に減額されたことに抗議し、改善を求める声明文を、374名の研究者の賛同を得たうえで、兵庫県に提出しました。そこでは、補助金減額措置が主に以下の5つの理由から不当であると指摘しました。

 

①民族教育権を認めないばかりか、それを日本の教育よりも劣ったものと位置づけ、「外国人学校振興費補助」の意義をみずから否定する、矛盾に満ちたものである。

②2016年3月29日に送付された文部科学大臣通知を踏まえた判断であり、国家による教育への不当な干渉を許容し、地方公共団体の権限をみずから放棄したものである。

③日本の朝鮮侵略・植民地支配を背景に、日本に定住せざるを得なかった在日朝鮮人の子孫が、朝鮮人としてのアイデンティティを形成するために設立された学校であることを無視したものである。

人種差別撤廃条約子どもの権利条約などの、人権に関する国際基準に照らして、極めて不当なものである。

⑤昨今の朝鮮半島をめぐる情勢進展に逆行し、なおかつ排外主義を追認・助長するものである。

 

しかし県は、「外国人学校振興費補助」に「教員の2/3以上が日本の教員免許を所有すること」という新たな交付基準を設け、朝鮮学校6校への補助金を従来の約2分の1に削減する方針を、2019年度も変更しませんでした。

なお、県はその「補填策」として、以下の二つの事業を実施することを通達しました。

 

①「私立学校における特色教育等への支援の充実強化」を目的として、従来私立学校のみ適用されていた補助金専修学校各種学校にも適用する。

②PRの取り組みに対する支援として「外国人学校多文化共生推進事業」の支援をする。

 

しかし、これらの事業は、臨床心理士などのカウンセリングや食育活動、「外国人学校フェスティバル」の開催等、極めて限定的な場面にのみ適用されうるものであり、「外国人学校振興費補助」の本来の趣旨とは全く異なるものです。また、「外国人学校振興費補助」の削減額が4000万円以上にのぼるのに対し、この「補填策」では一校につき最大で100万円程度の補助にしかならず、実際には質的にも量的にも、補填策としてほとんど意味を成さないものであると言わざるをえません。

以上のような理由から、わたしたち研究者有志一同は、当事者や市民からの多数の抗議の声があるにもかかわらず、差別的施策を放置したことを批判するとともに、速やかな補助金支給の再開を求めます。

 

2 幼児教育・保育無償化制度から朝鮮幼稚園を含む各種学校を除外したことについて

 近年、政府による朝鮮学校に対する弾圧はますます加速しています。高校無償化・就学支援金制度からの朝鮮高級学校の排除は、明らかに政治・外交的理由によるものであり、憲法第14条、子どもの権利条約人種差別撤廃条約等の国際法、さらには教育の機会均等の確保という制度そのものの理念に反するにもかかわらず、政府は差別を是正することなく排除を継続しています。また、今年度スタートする幼児教育・保育無償化制度からも、各種学校は「多種多様な教育を行っており、また、児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しない」という、法的根拠のない理由により除外されることが決定しました。

兵庫県では、阪神・淡路大震災という未曽有の危機に際しても外国人県民の存在を考慮した互助や協働の取り組みが数多く行われ、またその教訓は「ひょうご多文化共生社会推進指針」に引き継がれ、現在も県の施策の基本方針となっています。各種学校排除の理由とされている「多種多様な教育」は、兵庫県にとってはむしろ積極的に推進されるべきことであり、いまこそ多文化共生を標榜する自治体としてのあるべき姿を全国に示すべきではないでしょうか。

この問題の根本的な原因は、国の差別的姿勢にあります。しかし、県が国の方針を無批判に追認し、地方公共団体の権限で可能な措置を検討すらしないのは、これまでの兵庫県の取り組みを反故にするものであると言わざるをえません。「幼児教育類似施設」に対して、国は地方自治体と協議のうえ、無償化に準ずる支援を行うことが検討されていますが、県は朝鮮幼稚園についても同等の支援を行うことを国に要請すべきです。また、国によって必要な措置が取られなかった場合においても、県独自の支援策を講じることは可能なはずです。

わたしたち研究者一同は、兵庫県に対し、幼保無償化除外問題を国政の問題だからと放置するのではなく、自治体として何ができるのかを真摯に議論し、必要な措置を講じることを求めます。

 

 

70年前の1949年10月、当時の政府は二度目の朝鮮人学校閉鎖令を下し、「阪神教育闘争」の末に守り抜かれた朝鮮学校を消滅の危機に追い込みました。国と地方自治体が一体となって朝鮮学校を弾圧する現在の状況は、70年前の光景を彷彿させるものです。また、朝鮮学校と生徒に対するヘイトスピーチヘイトクライムも後を絶ちません。

民族の言葉や文化、歴史を学び、在日朝鮮人としてポジティブなアイデンティティを形成するために朝鮮学校に通う生徒たちが、なぜ在日朝鮮人であることを理由に、直接的な暴力のリスクと隣り合わせの生活を送らなければならないのでしょうか。わたしたち研究者有志一同は、当時の状況を回帰させてはならないという強い思いのもとで、兵庫県朝鮮学校生徒の民族教育権を保障することを求めます。

 

以上

 

朝鮮学校生徒の学ぶ権利の保障を求める研究者声明賛同人一同

兵庫県補助金研究者声明記者会見報告

兵庫県補助金研究者声明記者会見報告

 

 2018年11月5日午後16時より行われた記者会見についてご報告する前に、まず15時から行われた補助金削減の撤回を求める要請活動について簡単に触れておきます。要請側は、金錫孝兵庫朝鮮学園理事長、許敬神戸朝鮮高級学校校長、宮本博美日朝友好兵庫県民の会幹事長、坂本三郎部落解放同盟中央本部副委員長・兵庫県連合会委員長、兵庫県議会議員として黒田一美氏と谷井勲氏、および研究者代表として杉山精一神戸市外国語大学准教授と田中敏彦神戸市外国語大学名誉教授、合計八名で、兵庫県庁に兵庫県企画県民部長山口最丈氏を訪問し、『兵庫朝鮮学校への「外国学校振興費補助』の減額の見直しを求める署名』41,319筆を提出するとともに、「朝鮮学校に対する兵庫県の不当な補助金減額に抗議する研究者有志の声明」を提出し374名の賛同者が集まったことを報告しました。朝鮮学園理事長から、減額措置の不当性について説明があり、次いで要請参加者と企画県民部長との間に質疑応答が行われました。

 

 16時より県庁の記者会見室で、神戸新聞朝日新聞共同通信社、NHK神戸放送局の記者に資料を配付して、杉山・田中の両名が記者会見に臨みました(配付資料は、補助金が削減されて来た経緯の説明・「朝鮮学校に係る補助金交付の留意点について」と題する平成28年3月29日付け文部科学大臣通知・「朝鮮学校に対する兵庫県の不当な補助金減額に抗議する研究者有志の声明」・「声明の趣旨」・声明に賛同した研究者374名の名簿・賛同者から「寄せられたメッセージ」)。

 

 まず杉山の方から、「声明の趣旨」をもとに、段階的に減額されてきた経緯を説明するとともに、兵庫県による減額措置が、朝鮮学校を狙い撃ちし民族教育の意義を認めないばかりか「外国人学校振興費補助」の意義に矛盾すること、この措置が文部科学省通知(平成28年3月29日)を踏まえたものであるため教育への政治の不当な干渉であるとともに地方公共団体の権限を自ら放棄することになること、日本の朝鮮侵略・植民地支配を背景に日本に定住せざるを得なかった在日朝鮮人の子孫が朝鮮人としてのアイデンティティを形成するために設立された学校であることを無視したものであること、人権に関する国際基準に照らして極めて不当であること、などの説明がありました。

 

 田中の方からは、「研究者有志の声明」の賛同者から寄せられたメッセージのうち、とりわけ興味深いと思われる指摘について説明がありました。まず第一点は、今回の措置が「現代版学校閉鎖」であり、敗戦後在日朝鮮人の間で湧き上がった朝鮮語の学習熱を背景に作られた朝鮮人学校に対して、マッカーサー指令に従って文部省が1948年1月「朝鮮人設立学校の取り扱いについて」(「朝鮮人学校閉鎖令」)という通達を出したことに抗議して、大阪・兵庫で起こった激しい反対運動、いわゆる「阪神教育闘争」からちょうど70周年の今年に出された措置であるという指摘です。4月24日神戸の朝鮮人学校が封鎖されたことに抗議して在日朝鮮人および日本人が県庁に押しかけ知事を知事室に閉じ込めて「学校閉鎖令の撤回」や「朝鮮人学校存続の承認」を知事から引き出したものの、占領軍が介入して戦後では一度だけという「非常事態宣言」が発令されるという大事件でした。もちろんそうした「撤回」や「承認」は無効にされましたが、同年5月5日、文部大臣と朝連教育対策委員長の間で「私立学校の自主性の範囲のなかで朝鮮人独自の教育を認め、朝鮮人学校を私立学校として認可する」という覚書が結ばれたことを考えると、阪神教育闘争は朝鮮人学校の原点とも言える意義をもっています。第二点は、「大震災の時、さまざまな外国人学校が日本で初めての「外国人学校協議会」を作り、その運動の中から各種学校一条校並みの復興予算を獲得したと聴いています。「みなと神戸」の矜持を失って欲しくない」という指摘です。震災時に朝鮮学校が中心になって「外国人学校協議会」が作られたこと、また「外国人学校振興費補助」は震災を契機に復興予算として始まったということも重要な指摘です。

 

 以上の説明に対して、記者の皆さんから、なぜこのタイミングで記者会見を開いたのか、声明の賛同者はどのように集めていったのか、これから以後の計画はあるのか、などの質問がありました。

 

要請活動、記者会見

研究者声明提出の日程が確定しましたのでお知らせいたします。

 

日時:2018年11月5日(月)15:00

場所:兵庫県

 

374人分の知事宛ての署名を提出いたします。本来は知事に直接、批判の声を届けるべきところですが、来年度の予算審議のスケジュールなども考慮し、やむを得ず、県民企画部に提出することになりました。ご理解のほどよろしくお願いいたします。

 

なお、当日は署名提出後、16時から、県庁記者クラブにおいて、呼びかけ人による記者会見を開きます。

성명의 취지

※韓国からも多くの方に賛同をいただいておりますので、呼びかけの趣旨を韓国語で掲載いたします。

 

2018년 2 월 효고현은 "뛰어난 학습 환경을 제공"하는 학교의 지표로 '교원의 2/3 이상이 일본의 교원 면허를 소유하는 것'이라는 새로운 기준을 마련했습니다. 이 조치 때문에 효고현 소재 외국인학교 12 곳 중 6개의 조선학교만 기준을 충족하지 못하여 보조금이 2분의 1로 대폭 삭감되었습니다. 2017년도에 비해 4600만엔이 삭감된 2900만엔이 지급되었습니다.

 

이러한 효고현의 조치는 ① 민족교육의 중요성을 인정 하지 않을 뿐만 아니라, 그것이 일본 교육보다 열등한 것으로 간주하여, "외국인학교 진흥 연구비 조성'의 원래 의의를 스스로 부정하는 모순에 가득 찬 것

② 2016 년 3 월 29 일에 제출된 문부과학대신통지를 위한 판단이므로 정부에 의한 교육에 대한 부당한 간섭인 뿐만 아니라, 지방자치단체의 권한을 스스로 포기한 것

③ 일본에 의한 침략·식민지배를 배경으로 일본에 정착할 수밖에 없었던 재일 조선인의 자손이 조선인으로서의 정체성을 형성하기 위해 설립된 학교임을 무시한 것

④ 인권에 관한 국제기준에 비추어 지극히 부당한 것

⑤ 최근 한반도를 둘러싼 정세의 급격한 전개에 역행하고, 배타주의를 추인, 조장하는 것

 

입니다. 따라서 이에 강력히 항의하고, 한시라도 빨리 조선학교에 적절한 보조금 지급을 재개할 것을 요구하는 성명서를 발표하기로 했습니다.

 효고현은 전국의 지방자치체 중에서도 조선학교와 비교적 좋은 관계를 맺고 보조금을 지급해 온 것으로 알려져 있습니다. 따라서 이번 조치를 인정해 버리면 이러한 추세가 다른 지자체에도 전파될 것이 우려됩니다. 이 점을 고려하여 이미 「학교법인 효고조선 학원」의 요청에 의한 서명운동이 전국적으로 전개되고 있지만, 교육연구활동에 종사하면서 일본 전국, 심지어 해외에 퍼지는 네트워크를 가진 연구자의 입장을 살려 국내외 연구자로부터 찬동을 모집하여 효고현에 더한 문제제기를 하기로 했습니다. 이해와 협력을 부탁 드립니다.

 

(※ 「연구자」는 대학원생, 박사과정 수료자, 퇴직한 연구자, 민간연구기관의 연구자 등, 넓게 정의합니다.)

모집폼 https://goo.gl/forms/UCbwZqAkovO1u9t33

성명문(일어) https://hyogo-hojokin-seimei.hatenablog.com/