兵庫県補助金研究者声明記者会見報告

兵庫県補助金研究者声明記者会見報告

 

 2018年11月5日午後16時より行われた記者会見についてご報告する前に、まず15時から行われた補助金削減の撤回を求める要請活動について簡単に触れておきます。要請側は、金錫孝兵庫朝鮮学園理事長、許敬神戸朝鮮高級学校校長、宮本博美日朝友好兵庫県民の会幹事長、坂本三郎部落解放同盟中央本部副委員長・兵庫県連合会委員長、兵庫県議会議員として黒田一美氏と谷井勲氏、および研究者代表として杉山精一神戸市外国語大学准教授と田中敏彦神戸市外国語大学名誉教授、合計八名で、兵庫県庁に兵庫県企画県民部長山口最丈氏を訪問し、『兵庫朝鮮学校への「外国学校振興費補助』の減額の見直しを求める署名』41,319筆を提出するとともに、「朝鮮学校に対する兵庫県の不当な補助金減額に抗議する研究者有志の声明」を提出し374名の賛同者が集まったことを報告しました。朝鮮学園理事長から、減額措置の不当性について説明があり、次いで要請参加者と企画県民部長との間に質疑応答が行われました。

 

 16時より県庁の記者会見室で、神戸新聞朝日新聞共同通信社、NHK神戸放送局の記者に資料を配付して、杉山・田中の両名が記者会見に臨みました(配付資料は、補助金が削減されて来た経緯の説明・「朝鮮学校に係る補助金交付の留意点について」と題する平成28年3月29日付け文部科学大臣通知・「朝鮮学校に対する兵庫県の不当な補助金減額に抗議する研究者有志の声明」・「声明の趣旨」・声明に賛同した研究者374名の名簿・賛同者から「寄せられたメッセージ」)。

 

 まず杉山の方から、「声明の趣旨」をもとに、段階的に減額されてきた経緯を説明するとともに、兵庫県による減額措置が、朝鮮学校を狙い撃ちし民族教育の意義を認めないばかりか「外国人学校振興費補助」の意義に矛盾すること、この措置が文部科学省通知(平成28年3月29日)を踏まえたものであるため教育への政治の不当な干渉であるとともに地方公共団体の権限を自ら放棄することになること、日本の朝鮮侵略・植民地支配を背景に日本に定住せざるを得なかった在日朝鮮人の子孫が朝鮮人としてのアイデンティティを形成するために設立された学校であることを無視したものであること、人権に関する国際基準に照らして極めて不当であること、などの説明がありました。

 

 田中の方からは、「研究者有志の声明」の賛同者から寄せられたメッセージのうち、とりわけ興味深いと思われる指摘について説明がありました。まず第一点は、今回の措置が「現代版学校閉鎖」であり、敗戦後在日朝鮮人の間で湧き上がった朝鮮語の学習熱を背景に作られた朝鮮人学校に対して、マッカーサー指令に従って文部省が1948年1月「朝鮮人設立学校の取り扱いについて」(「朝鮮人学校閉鎖令」)という通達を出したことに抗議して、大阪・兵庫で起こった激しい反対運動、いわゆる「阪神教育闘争」からちょうど70周年の今年に出された措置であるという指摘です。4月24日神戸の朝鮮人学校が封鎖されたことに抗議して在日朝鮮人および日本人が県庁に押しかけ知事を知事室に閉じ込めて「学校閉鎖令の撤回」や「朝鮮人学校存続の承認」を知事から引き出したものの、占領軍が介入して戦後では一度だけという「非常事態宣言」が発令されるという大事件でした。もちろんそうした「撤回」や「承認」は無効にされましたが、同年5月5日、文部大臣と朝連教育対策委員長の間で「私立学校の自主性の範囲のなかで朝鮮人独自の教育を認め、朝鮮人学校を私立学校として認可する」という覚書が結ばれたことを考えると、阪神教育闘争は朝鮮人学校の原点とも言える意義をもっています。第二点は、「大震災の時、さまざまな外国人学校が日本で初めての「外国人学校協議会」を作り、その運動の中から各種学校一条校並みの復興予算を獲得したと聴いています。「みなと神戸」の矜持を失って欲しくない」という指摘です。震災時に朝鮮学校が中心になって「外国人学校協議会」が作られたこと、また「外国人学校振興費補助」は震災を契機に復興予算として始まったということも重要な指摘です。

 

 以上の説明に対して、記者の皆さんから、なぜこのタイミングで記者会見を開いたのか、声明の賛同者はどのように集めていったのか、これから以後の計画はあるのか、などの質問がありました。